我是日本内阁总理大臣岸田文雄。首先,请允许我对“亚洲的未来”晚餐会的隆重召开表示最由衷的祝贺。今天能在此就“亚洲的未来”进行演讲,我深感荣幸。
直到2月23日以前,我都在一直期待,在这次的“亚洲的未来”会议上也能和过去一样,各位围绕光明的未来和亚洲的繁荣畅所欲言。
然而,现在威权主义国家却公然将国际法与人道主义踩在脚下,全世界都在目睹它难以置信的侵略行为。和平与秩序是正常开展一切活动的前提,但它们却突然遭到破坏,令我深受打击。
面对这个新的现实,我们该如何面对被撼动的国际秩序、展望亚洲的未来呢?现在,全世界都站在历史的十字路口上,也正因此更加需要各国各界的领导者开诚布公地进行讨论,并采取相应的行动。
“亚洲的未来”会议给了我们一个宝贵的机会,能让我们围绕这些问题畅所欲言。今天,针对在动荡的世界格局中日本该如何加以应对,以及亚洲的未来将何去何从,我想与各位分享一下我的想法。
首先,我介绍一下应对动荡的世界格局的基本思路。
应对威权主义国家单方面且具有强迫性的行动、加强七国集团(G7)的凝聚力、提高以半导体为首的供应链的安全性和韧性、同步解决气候变化与能源安全保障问题、将数字规则融入地区经济合作之中。
在时刻变化的环境中,我们面对的课题可谓是形形色色。
我认为,现今的国际形势可以划分为三个层面。第一个层面是在各国自行决策和行动的外交与安全保障问题。第二个层面是由跨国企业担当重要角色的贸易与投资问题,或者说是与数字交易相关的问题。第三个层面是新冠疫情、气候变化等拥有世界规模的人类共同的课题,或者说是如何解决世界性课题相关的问题。这三个层面相互复杂交错,因此需要先明确彼此的优先度后再着手进行应对。
第一层面的问题是需要最先应对的。对于撼动国际秩序根基、干涉自由与人权等普世价值的风险行动,我们需要以毅然决然的态度加以应对。正因为将其放在了最优先处理的位置,所以我们才决定转换原来的对俄政策,选择了制裁这个长期消耗的手段,同时强化七国集团的凝聚力。
这个问题并非是“倒向美国还是中国”的问题,而是“守护还是失去普世价值与和平秩序”的问题。今后,我们将继续向亚洲各界的领导者寻求理解与合作。
关于第二层面的问题,我认为有必要采用全面与进步跨太平洋伙伴关系协定(CPTPP)、区域全面经济伙伴关系协定(RCEP)、双边自由贸易协定(FTA)、亚太经济合作组织(APEC)等多种规则的多层网络来予以管控。本次正式启动的印太经济框架(IPEF)也是其中之一。通过该项目可以看出,美国明确表示在退出跨太平洋伙伴关系协议(TPP)后有意再次涉足印太地区的经济活动,因此我认为它具有非常大的战略意义。它有意通过制定规则、开展人才合作、支援基础设施建设一系列的方法来解决数字以及供应链、脱碳等21世纪课题,是一个非常积极进取的项目。
今后,日本将化身为连结美国与亚洲诸国的桥梁,为促进印太经济框架成为一个具有包容性且可持续成长的平台作出力所能及的贡献。
另一方面,我们将继续不懈地游说美国重返跨太平洋伙伴关系协议这个以市场的极度自由化为核心、拥有高标准规定的制度之中。跨太平洋伙伴关系协议能使相关国家进入美国市场,区域全面经济伙伴关系协定则为进入中国这一巨大市场提供了可能,我认为有必要令这两个制度实现战略性共存。
关于第三层面,我认为应该与拥有解决意愿及技术的各国积极进行合作。为解决人类共同课题而建立合作体制,可以缓解第一层面中所涉及的对立和经济脱钩问题。
本着以上的基本思路,我们又该如何展望亚洲的未来呢?接下来,我想就这一点进行介绍。
我有一位值得尊敬的前辈,他在动荡不安的时代,对地区的未来认真加以思考,并采取了一系列行动。他就是现在我所率领的自民党政策集团“宏池会”的中兴之主——日本前总理大平正芳。
距今约40年前,在缓和政策带来的相对缓和状态宣告结束,大国关系即将再度回归高度紧张状态的背景下,大平前总理说:“为了维持正在接受极大考验的基本国际秩序,日本必须积极尽到与日本国际地位相应的职责和责任。”通过这番话,他表明了将正面应对严峻国际形势的态度。
不仅是态度,前总理还实际付诸于行动,即提出了环太平洋连带构想。
这个构想所提倡的愿景是:“将太平洋的可能性最大限度发挥出来,这不仅是为了太平洋各国,还为了整个人类社会的福祉与繁荣。”这个愿景最终促成了亚太经济合作组织的成立。
正如前总理摸索出亚洲地区的新国际秩序一样,我们需要更进一步,建立始于亚洲的新国际秩序。现在亚洲的经济规模已经占到全球经济的约35%,可以说亚洲是全世界最具成长性的地区,也是世界经济的中心。在亚洲采取的行动会改变世界。
可以说,亚洲的未来已经不仅仅是单独为了亚洲而存在的了。我希望将亚洲地区打造成能为世界带来和平和可持续繁荣的地区。
因此,我的愿景是,在后冷战时代之后以及在后新冠时代,印太地区既应该是一个“自由开放的地区”,也应该是一个“可持续强劲成长的地区”,还应该是一个“为解决世界性课题作出贡献的地区”。
日本将与亚洲的伙伴们携手并进,为开拓亚洲地区的未来作出积极贡献。同时,日本还将化身为连结亚洲与世界的桥梁,尽到相应的职责与责任。
我在思考亚洲的未来之时,最为重视的就是日本与东盟(ASEAN)之间的关系。
东盟将统一性与中心地位定为原则,具有多样性,它为亚洲地区的发展作出了贡献。
与印太地区相关的《东盟印太展望》提出了多项与自由开放的印太地区这一理念相通的原则。
针对东盟的这些原则,日本一贯表示支持。日本作为东盟很好的友人、交心的伙伴,与东盟携手一同走至今日。
明年是日本与东盟缔结友好合作关系50周年,值此之际,我愿意将日本与东盟的关系推向新的阶段。明年,我希望能与东盟各成员国一同制定关系发展的新方向与合作新愿景。
接下来,我想具体说明以下我的愿景。首先是“自由开放的地区”。
“今天的乌克兰有可能就是明天的东亚。”在乌克兰发生的以武力单方面改变现状的行为有可能于全世界任何一个地方重演。
为了维护和平秩序、实现地区的持久繁荣,我们必须恪守基本原则,在任何地区都决不能允许侵犯主权以及领土完整的行为,也不能允许以武力单方面改变现状的行为。
因此,我认为在这个地区应该依靠法治来构建自由开放的秩序,而不是依靠武力。
第二点是“可持续强劲成长的地区”。
现在,我正在提倡所谓新资本主义的经济政策。新资本主义不仅可应对贫富差距增大、气候变化、城市问题等外在不经济问题,它还对资本主义进行升级,以应对来自威权主义体制的挑战。
这里重要的是,我们不要把社会问题当成绊脚石,而是将其转换为成长的引擎,要鼓励官与民向课题领域进行投资,这样可以在解决社会课题的同时实现强劲成长,做到双管齐下,并打造可持续发展的经济。
我希望能与亚洲的各位友人分享这些想法,一同解决课题,将亚洲发展成可持续强劲成长的地区。
接下来是第三点“为解决世界性课题作出贡献的地区”。
这一点涉及之前我所提及的第三层面的内容。我认为,在今后的时代,亚洲应该作为世界经济成长的主引擎、创新的枢纽,为解决世界性课题作出积极贡献。
在这些愿景下,日本今后将采取四点具体行动,它们分别是:构建自由开放的国际秩序、就维护和平秩序进行合作、促进人与人之间跨越国界的交流、为共同解决社会课题强化关系。
第一:构建自由开放的国际秩序。
日本尊重国际法与国际社会的原则,与共享普世价值的同盟国、同志国紧密合作,并高举自由开放的印太地区的旗帜一路前行。
为了实现自由开放的印太地区,日本对美国积极参与印太地区一事表示欢迎。拜登总统于之前的日美首脑会谈等场合多次表示将致力于印太地区的相关事宜,令我备受鼓舞。
我与拜登总统一同确认,日美同盟是为维持整个印太地区的和平与安定作贡献的同盟,今后两国将携手解决本地区所面临的安全保障方面的课题。
在推进自由开放的印太地区方面,日美澳印(QUAD)四国的作用也非常重要。前天,四国首脑承诺将就新冠疫情、基础设施建设、太空等广泛领域进行实践性合作,并为印太地区带来利益。
第二是就维护和平秩序进行合作。
今后我们将着眼于地区的特点、各国的实际情况以及安全保障方面的课题,战略推进多角度、多层次的安全保障合作。
我在于不久以前访问东南亚时,部分工作获得了一定的进展,例如与泰国签署了防卫装备及技术转让协议,以及决定就向印度尼西亚提供巡逻船一事进行探讨等。今后,我将继续推进诸如此类的实践性合作。
未来我们还计划将推进经济安全保障、网络安全、经济胁迫与虚假信息等印太地区面对的新时代课题也纳入视野之中,以期与各国进一步扩展合作领域、加深合作深度。
另外,我们还将进一步开展于日本享有优势的海洋安全保障、灾害应对等领域的合作。关于在日美澳印首脑会议上确认的海域意识相关新倡议以及人道主义支援、灾害救援的伙伴关系,今后我们也会加以充分利用。
第三是促进人与人之间跨越国界的交流。
人与人之间自由、活跃的交流是经济与社会的基础,也是亚洲发展的基础。
对于日本来说,为了强化医疗供给体系、确保疫苗接种工作的顺利开展,口岸防疫措施的强化是必不可少的。今后我们计划进一步放宽该措施。
其中具体包括,从6月1日起将每天的入境人数上调至2万人,并参照过去入境检查结果免除阳性率较低的国家的相关检查。
另外,基于正在实施的实证试验与制定的相关指南,我们还定于下个月10日起重新开放有导游陪同的旅行团入境。与此同时,我们还计划于6月内重开新千岁机场与那霸机场的国际航班,对此我们正在进行相关准备。
另外,针对疫情较为稳定的国家与地区,从今天起我们下调了出境感染危险信息级别。
今后,我们将继续关注疫情进展并分阶段调整入境政策,最终将其恢复至疫情前的状态。
第四是为共同解决社会课题强化关系。
具体内容包括:向创新活动与初创公司投资、提升供应链韧性、对起到连接亚洲作用的基础设施进行投资、实现全民健康覆盖、亚洲零排放共同体构想。我们将依靠这五大支柱来强化与亚洲的关系。
第一大支柱是向创新活动与初创公司投资。
创新的力量是解决我们所面临的社会课题、实现可持续强劲成长的关键。
针对当地企业与日本企业通过协作等方式互相学习、实现创新的这个措施,我感受到了巨大的可能性。
特别是由初创企业发挥主导作用的跨国协作值得关注。
现在,在日本以及东盟,立志于解决社会课题的创业人士越来越多。他们站在世界这个大舞台上,向商业活动与解决社会课题同步进行这个问题勇敢地发起了挑战。
举例来说,我在不久之前与日本的一家初创企业交流后得知,这家公司正在与泰国当地的企业合作开展一个项目。这个项目利用独创的人工智能(AI)技术对虾的食欲和成长过程进行分析,并通过在最合适的时间自动喂食来推动虾养殖业的进步。
再举一些例子,一家日本的商社与越南的农业科技初创企业合作,它们正在开展一项提升越南农业的物资采购、栽培管理水平的项目;另一家日本企业则与马来西亚的初创企业合作,它们开展的是将利用无人机提高农业生产力、进行设备远程点检的技术推广至全世界的项目。
今后我们将充分利用大使馆、日本贸易振兴机构(JETRO)、商社、银行等官民之间的关系与渠道,为初创企业提供新的对接机会。与此同时,我们还计划通过为东盟企业联合实施的实证试验、研究开发活动提供支援,以期将日本企业与东盟企业的协作项目数量提升至每年100件以上。
第二大支柱是提升供应链韧性。
日本与东盟自以前起就着手于多层次供应链的建设。今后,为对其加以维持、强化,官与民的持续投资非常重要。
不仅如此,我们还计划通过数字方式连接整个供应链,并证明其所提供的商品和服务均供应稳定且值得信赖。要通过这样全新的想法,提升供应链的韧性就变得愈加重要。
在今后的5年内,日本将至少为100个提升供应链韧性的项目提供支援,并利用其积累的知识和经验制定推进数据跨国共享、跨国合作的通用规则等,借此打好依靠新想法提升供应链韧性的基础。
第三大支柱是需求持续走高的连接亚洲的基础设施投资。
为了提升地区的连通性、实现地区一体化的成长,今后我们将继续通过政府开发援助(ODA)等渠道,对高品质的基础设施建设进行进一步投资。在此基础之上,我们还将采取人力投资、制度方面的协调以及知识产权方面的合作等具体措施来巩固非物质面的基础。
为了避免通过不公平、不透明的贷款等违反国际规则和标准的开发性金融不当干涉借款国的政策决定、致使借款国失稳等,我们将通过与七国集团、关于金融市场与世界经济的首脑会议(G20)、日美澳印等的合作,与国际社会一同协助借款方提升能力。
第四大支柱是实现全民健康覆盖(UHC)。在新冠疫情之前,为了实现全民健康覆盖这个目标,日本一直在推动着相关工作的开展。
新冠疫情发生后,人们更加重视疫苗与医药品的公平利用以及高品质护理。因此,不仅仅是其他地区,对于亚洲来说,实现全民健康覆盖也是极其重要的课题。
本月,相关决策决定东盟传染病对策中心秘书处将设立于泰国。日本对该设施的设立全面进行了援助,并提供了55亿日元的资金。
今后我们将基于前天公布的国际健康战略的内容,为亚洲实现全民健康覆盖这一目标继续积极作出贡献。
第五大支柱是实现亚洲零排放共同体构想。
与日本相同,现在亚洲多个国家都将实现碳中和定为目标,并积极地向这个人类共同的课题发起了挑战。
这里重要的是,脱碳工作需要在维持经济的持续增长的同时,按照符合各国国情的方法来开展。当然,这里的大前提是必须要确保能源的稳定供给。
每个国家的能源状况都不尽相同。与欧洲和非洲相比,亚洲的可再生能源潜力较低,且伴随着未来人口和经济的增长,30年后对于电力的需求或将达到现在的2.5倍。因此,未来我们也不得不在一定程度上依赖于可按需灵活运用的电力来源。
亚洲零排放共同体构想将亚洲的现状考虑在内,并在提倡引进可再生能源、推进节能的同时采取多种措施以实现火力发电的零排放,最终引领亚洲各国共同脱碳。上述措施具体包括联合实施生物质发电、氢能发电、氨能发电、碳捕获、利用与封存技术(CCUS)的实证试验、合作建设基础设施与供应链、制定亚洲版转型金融的规则、制定零排放技术相关标准、运用亚洲范围内的排放权交易等。
日本今后将尽己之能提供技术、至今为止积累的经验、专业知识与金融能力,为亚洲实现脱碳贡献一份力量。
现在,已经有一些项目成功实现将脱碳的经验与知识从日本的都市移转至亚洲其他的都市。例如,由日系企业所主导、在新加坡实施的与构建氢能供给供应链相关的实证试验,以及探讨如何实现在印度尼西亚进行混氨燃烧、纯氨燃烧等。我们计划今后将类似的项目继续推广到整个亚洲。
针对共同体构想,印度尼西亚给予了我们这样的答复:想与日本同心协力实现亚洲零排放共同体这个目标,为此印度尼西亚希望能与日本一同发挥核心作用。另外,正如在“亚洲的未来”会议上表明的那样,今天泰国也给予了我们积极正面的回复。我们非常愿意与亚洲各国合作,一同实现共同体。
1个月前左右,我在访问泰国的时候,前往了位于曼谷的KOSEN。各位是否知道什么是KOSEN呢?
KOSEN是由日本设立的培养实践型工程师的独特的高等教育机构。
在日本的援助下,泰国也设立了KOSEN。我在前往视察这所学校、观摩课堂教学的时候,2名泰国学生用日语的专业术语“示波器”、“固有频率”向我介绍了实验的内容,令我非常难忘。
不难想象,在不久的将来,这两名学生将和日本的年轻人抵掌而谈,携手共创泰国和亚洲的未来。
日本并不期待只有日本单方面受益的关系。
为人才培养提供支援,这个举措正可谓是代表了日本的态度。为了协助支援国储备人才资源,日本长年以来致力于为人才的培养提供帮助,KOSEN也是如此。
我们的目标是,做各国的好邻居、好伙伴,与各国携手共同开创亚洲的未来。
日本将为了这个目标竭尽全力,积极地尽到相应的职责和责任。
在致辞和演讲的最后,请允许我衷心地祝愿到场的各位来宾身体健康,事业一帆风顺!
日文原文:
内閣総理大臣の岸田文雄でございます。「アジアの未来」の盛大な開催を心からお喜び申し上げます。今日、こうして「アジアの未来」において、講演させていただきますこと、大変光栄に思っております。
この「アジアの未来」では、今回も、明るい未来、そしてアジアの繁栄について、議論が活発に行われるだろうと期待しておりました。少なくとも2月23日までは、です。
今、世界は、権威主義的国家による、国際法も、また人道も踏みにじる信じがたい侵略を目の当たりにしています。全ての活動の前提となる平和や秩序が、突如崩されていく有様に衝撃を受けました。
この新たな現実を直視し、国際秩序の揺らぎに対応して、いかなるアジアの未来を構想していくか。世界全体が歴史の分岐点にある今、これまで以上に各国各界のリーダーが、本音で議論し、行動していくことが求められます。
この「アジアの未来」は、そうした率直な議論の場として、貴重な機会です。本日は、この激動する世界に、我が国はどの様な考え方で臨むのか、そして、アジアの未来についての私の考えを説明させていただきたいと思います。
まずは、激動する世界に対峙(たいじ)する際の基本的考え方について申し上げます。
権威主義的国家による一方的・威圧的な行動への対応とG7の結束強化。また、半導体を始めとするサプライチェーンの安全性・強靭(きょうじん)性の確保。気候変動問題とエネルギー安全保障の両立。地域経済連携へのデジタル・ルールの組入れ。
時々刻々と状況が変化する中で、我々が直面する課題は実に様々です。
私は、現下の国際情勢を、3つのレイヤーで捉えています。第1のレイヤーは、各国単位で意思決定と行動がなされる外交・安全保障の問題です。第2のレイヤーは、国境を超えて活動する企業が大きな役割を担う貿易・投資、あるいは、デジタル取引に関するルールの問題です。そして、第3のレイヤーは、感染症対応や、気候変動問題など地球規模かつ人類共通の、いわば世界の課題解決に関する問題です。様々に重なり合う3つのレイヤーに対し、プライオリティを明確にして対応していきます。
最優先は第1のレイヤーです。国際秩序の根幹や自由・人権などの普遍的価値に抵触するリスクに対し、毅然(きぜん)と対応していきます。従来の対露政策を転換し、制裁による長期的なコストを覚悟してG7との結束を強めているのは、こうした優先順位に基づくものです。
この問題は、「米中どちらにつくか」ではなく、「普遍的価値と平和秩序を、守るか失うのかどちらか」こうした問題であると思います。アジアのリーダーに、引き続き理解と協力を求めてまいります。
第2のレイヤーについては、CPTPP(環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定)、RCEP(地域的な包括的経済連携)、二国間FTA(自由貿易協定)、APEC(アジア太平洋経済協力)など多様なルールの網を、何重にもかけていくことが必要です。
今回、発足したIPEF(インド太平洋経済枠組み)もその1つです。IPEFは、TPP(環太平洋パートナーシップ)離脱後の米国が、インド太平洋地域への経済的関与を再び明確にしたものであり、戦略的意義は大きいと考えています。デジタルやサプライチェーン、脱炭素など21世紀型の課題に対し、ルール作りと人材協力、インフラ支援をセットで講じていこうとする意欲的な取組です。
IPEFがこの地域における包摂的で持続的な成長プラットフォームとなるよう、我が国は、米国とアジアの国々の懸け橋となり、最大限の貢献をしてまいります。
一方、市場の思い切った自由化を中核とし、ハイスタンダードなルールを規定するTPPへの米国の復帰を、引き続き、粘り強く働き掛けてまいります。米国という巨大市場へのアクセスを伴ったTPPと、中国という巨大市場へのアクセスの可能性を開いたRCEP、この2つを戦略的に併存させていくことが必要だと考えています。
第3のレイヤーについては、解決のための意思と技術を持った国々と積極的に協力を進めるべきと考えています。人類共通の課題に対して、共闘体制を作ることが第1のレイヤーでの対立やデカップリングの動きを緩和する効果を持つと考えています。
こうした基本的考え方を踏まえ、アジアの未来をどの様に描いていくべきか。次に、この点について申し上げます。
私には、激動する時代の中で、地域の未来について真剣に考え、行動した、尊敬する先達がいます。私が率いる自民党の政策集団、宏池会(こうちかい)の中興の祖である大平正芳元総理です。
今から約40年前、元総理は、デタントによる緊張緩和が終わり、再び、大国間の緊張が高まろうとする時代背景の下で、「重大な試練にさらされている基本的な国際秩序を維持するために、我が国の国際的地位にふさわしい役割と責任を積極的に果たしてまいらなければなりません。」このように述べ、厳しい国際情勢に、正面から向き合う姿勢を示しました。
姿勢だけではありません。元総理は、行動を起こしました。環太平洋連帯構想を打ち出したのです。
この構想は、「太平洋の可能性を、単に太平洋諸国のためでなく、人類社会全体の福祉と繁栄のために、最大限に引き出す」ことを掲げたビジョンでした。これが、後にAPECとして結実します。
元総理が、アジアにおける新たな国際秩序を模索したように、いや、それ以上に、今我々は、アジア発の新たな国際秩序を必要としています。なぜなら、今やアジアは、世界経済の35パーセント近くを占め、世界で最も成長する、正に、世界経済の中心だからです。アジアでの行動が世界を変えるのです。
もはや、アジアの未来は、アジアのためだけのものではありません。私は、この地域を、世界に、平和と持続可能な繁栄をもたらす地域としていきたいと思っています。
そのために、ポスト冷戦後、そして、ポストコロナ期のインド太平洋は、「自由で開かれた地域」、「持続可能で、力強く成長を続ける地域」、そして、「世界の課題解決に貢献する地域」であるべき、というのが私のビジョンです。
我が国は、アジアの仲間と共に地域の未来を創るために積極的に貢献し、アジアと世界との懸け橋となることで、自らの役割と責任を果たしてまいります。
そして、私がアジアの未来を考える時、最も重視しているのが、日ASEAN(東南アジア諸国連合)関係です。
ASEANは、一体性、中心性を原則に掲げ、多様性を包摂しながら、地域の発展に貢献してきました。
インド太平洋に関するASEANアウトルックでは、「自由で開かれたインド太平洋」の考え方と共通する多くの原則を掲げています。
我が国は、これらASEANの原則を一貫して支持し、ASEANの良き友人として、心と心のパートナーとして共に歩んで来ました。
来年、日ASEANは、友好協力50周年を迎えます。この機会に、日ASEAN関係を新たなステージに引き上げます。そのために、来年、新たな関係の方向性と協力のビジョンを、ASEAN各国の皆さんと共に、打ち出すことを目指します。
私のビジョンを具体的に説明します。まず、第1に、「自由で開かれた地域」です。
「ウクライナは明日の東アジアかもしれない。」ウクライナにおける力による一方的な現状変更は、世界のどこでも起こり得るものです。
平和秩序を守り抜き、地域の持続的な繁栄を実現するためには、いかなる地域においても、主権や領土の一体性の侵害や、力による一方的な現状変更は認められない、こうした基本的な原則が遵守されなければなりません。
だからこそ、私は、この地域において、力ではなく、法の支配に基づく自由で開かれた秩序を築き上げていくべき、と考えます。
第2に、「持続可能で、力強く成長を続ける地域」です。
私は、新しい資本主義という経済政策を提唱しています。新しい資本主義とは、格差の拡大、気候変動問題、都市問題などの外部不経済に対応しつつ、権威主義的体制からの挑戦に対応するために、資本主義をバージョンアップさせていこうという取組です。
社会課題を障害物と捉えるのではなく、成長のエンジンへと転換していくことがポイントです。課題とされる分野に官民の投資を集めることで、社会課題を解決するとともに、力強く成長する。二兎(にと)を追うことで、持続可能な経済を作っていきます。
私は、こうした考え方を、アジアの皆さんとも共有しながら、共に課題を乗り越え、アジアを持続可能で、力強い成長を続ける地域へと進化させていきたいと思っています。
そして、第3に、「世界の課題解決に貢献する地域」です。
先に述べた第3のレイヤーの部分です。私は、これからの時代、アジアは、世界経済成長のメインエンジンとして、イノベーションのハブとして、世界の課題解決に積極的に貢献していくべきだと考えています。
こうしたビジョンの下で、我が国は、4つの具体的なアクションに取り組みます。自由で開かれた国際秩序の構築、平和秩序を守り抜くための協力、国境を超えた人的交流の活性化、共に社会課題を乗り越えるための関係強化の4つです。
第1に、自由で開かれた国際秩序の構築です。
我が国は、国際法や国際社会の原則を尊重し、普遍的価値を共有する同盟国・同志国と緊密に連携して、「自由で開かれたインド太平洋」の旗印を高く掲げ続けてまいります。
「自由で開かれたインド太平洋」を実現する上で、我が国は、米国のインド太平洋への積極的関与を歓迎いたします。先日の日米首脳会談などの場で、バイデン大統領から、この地域へのコミットメントが繰り返し示されたことを心強く思っています。
バイデン大統領とは、日米同盟が、インド太平洋地域全体の平和と安定に貢献する同盟であり、両国が、この地域が直面する安全保障上の課題に取り組んでいくことを確認いたしました。
日米豪印、QUADも、「自由で開かれたインド太平洋」を推進する上で重要です。一昨日、コロナ、インフラ、宇宙など幅広い分野で実践的な協力を進め、インド太平洋に利益をもたらしていくことにコミットしました。
第2に、この地域の平和秩序を守り抜くための協力です。
地域の特性、各国の実情や安全保障上の課題を見据えながら、多角的・多層的な安全保障協力を戦略的に推進していきます。
先般の私の東南アジア訪問の際には、タイとの防衛装備品・技術移転協定の署名や、インドネシアへの巡視船供与の実現に向けた検討の決定など、具体的な取組が進展しました。今後とも、こうした実践的な協力を積み重ねていきます。
経済安全保障の推進や、サイバーセキュリティ、そして経済的威圧・偽情報など、地域が直面する新しい時代の課題にも裾野を広げ、各国との協力に幅と深みを与えていきます。
さらに、海洋安全保障や災害対応など、我が国が強みを有する分野での協力も進めます。日米豪印首脳会合でも協力を確認した、海洋状況把握に関する新たなイニシアティブや人道支援・災害救援のパートナーシップも、活用してまいります。
第3に、国境を超えた人的交流の活性化です。
自由で活発な人の交流は、経済・社会の基盤であり、アジア発展の基盤でもあります。
我が国の水際対策の強化は、医療提供体制の確保や、ワクチン接種を進める時間を確保するために、必要な措置でしたが、今後、水際対策を更に緩和していきます。
具体的には、6月1日から、一日の入国者総数を2万人に引き上げるとともに、入国時検査実績で陽性率が低い国については、入国時検査を行わずに入国を認めることといたします。
さらに、現在実施している実証事業とガイドラインの策定を受けて、来月10日から、添乗員付きのパッケージツアーでの観光客の受入れを再開いたします。あわせて、6月中に新千歳空港と那覇空港において、国際線の受入れを再開できるよう、準備を進めます。
また、感染が落ち着いている国・地域については、本日、海外へ渡航する際の感染症危険情報のレベルを引き下げました。
今後も、感染状況を見ながら、段階的に、平時同様の受入れを目指してまいります。
第4に、共に社会課題を乗り越えるための関係強化です。
具体的には、イノベーション、スタートアップへの投資、サプライチェーンの強靱化、アジアをつなぐインフラへの投資、ユニバーサル・ヘルス・カバレッジの実現、アジア・ゼロエミッション共同体、この5つの柱で、アジアとの関係を強化していきます。
第1の柱は、イノベーション、スタートアップへの投資です。
我々が直面する様々な社会課題を解決し、持続可能で、力強い成長を実現していく鍵は、イノベーションの力です。
私は、現地企業と日本企業とが協業などを通じ、お互いが学び合いながら、イノベーションを創発する取組に、大きな可能性を感じています。
特に、スタートアップがイニシアティブを発揮する国境を超えた協業に注目しています。
今、日本やASEANでは、社会課題解決の強い志を持つ起業家が増え始めており、世界を舞台に、ビジネスと社会課題解決の両立に果敢に取り組んでいます。
例えば、先日私が直接お話を伺った日本のスタートアップは、タイで、現地企業と連携し、独自AI(人工知能)技術によりエビの食欲・成長を解析し、適切なタイミングで自動給餌を行うことで、エビ養殖業をアップデートするプロジェクトに取り組んでいます。
例えば、ベトナムのアグリテックベンチャーと日本商社が協力し、ベトナム農業の資材調達や栽培管理を高度化する取組や、ドローンを用いた農業の生産性向上や遠隔でのプラント点検を行うマレーシアのスタートアップと日本企業が共に世界展開を行う取組なども行われています。
大使館、JETRO(日本貿易振興機構)や、商社、銀行など、官民のネットワークをフル活用したスタートアップのマッチング機会を創出するとともに、ASEAN企業と共同での実証や研究開発を支援することにより、日本企業とASEAN企業の協業を、毎年100件以上生み出していくことを目指します。
第2の柱は、サプライチェーンの強靱化です。
我が国とASEANは、かねてより、重層的なサプライチェーンを構築してきました。今後も、こうしたサプライチェーンの維持・強化に向け、官民が投資を行っていくことが大切です。
加えて、デジタルで、サプライチェーン全体をつなぎ、提供する商品やサービスが、安定的に供給され、かつ、信頼できるものであることを示せるようにしてまいります。そうした新しい発想により、サプライチェーンを一層強靱なものにしていくことが重要になっています。
我が国は、少なくとも今後5年間で100件のサプライチェーン強靭化プロジェクトを支援し、その知見を活用して、国境を超えたデータ共有・連携を推進するための共通ルールを設定するなど、新しい発想でのサプライチェーン強靭化に向けた基盤整備に取り組みます。
第3が、今後も旺盛な需要が見込まれる、アジアをつなぐインフラへの投資です。
地域の連結性を向上させ、地域一体となった成長を実現していくため、引き続き、ODA(政府開発援助)などを通じ、質の高いインフラへの投資を強化していきます。加えて、人への投資や、制度面での調和、知財協力など、ソフト面での基盤整備にも、具体的に貢献してまいります。
不公正・不透明な貸付けなど国際ルール・スタンダードを遵守しない開発金融によって、借入国の政策決定に不当に干渉することや、借入国が不安定化するようなことがないよう、G7、G20(金融・世界経済に関する首脳会合)、日米豪印などの国際社会と連携し、借り手の能力強化に取り組んでまいります。
第4に、ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)の実現です。我が国は、コロナ禍に先立ってUHC達成に向けた取組をけん引してきました。
コロナの感染拡大が起こり、ワクチン・医薬品への公平なアクセスや、質の高いケアが一層重視される中、UHCの実現は、アジアにおいても、極めて重要な課題です。
今月、タイにASEAN感染症対策センターの事務局が設置されることが決定されました。日本は、その設立を全面的に支援しており、55億円を拠出しています。
一昨日新たに公表したグローバルヘルス戦略の下、引き続き、アジアでのUHC実現に、積極的に貢献してまいります。
第5が、アジア・ゼロエミッション共同体の実現です。
我が国同様、アジアの国の多くが、カーボンニュートラルの達成を目標として掲げ、この人類共通の課題に積極的に挑んでいます。
重要なことは、脱炭素化を、持続的な経済成長を実現しつつ、各国の実情に応じた方法で行っていく、ということです。もちろん大前提として、エネルギーの安定供給確保も譲れません。
エネルギー事情は、各国様々です。アジアにおいては、欧州やアフリカと比べ、相対的に再生可能エネルギーのポテンシャルが低く、しかも、今後の人口増、経済成長に伴って、電力需要が今後30年間で2.5倍になると予想されています。そのため、今後も、一定程度、需要に応じ柔軟に活用できる電源に頼らざるを得ません。
アジア・ゼロエミッション共同体構想は、こうしたアジアの現実を直視しながら、引き続き、再エネ導入や、省エネを推進するとともに、火力発電のゼロエミッション化に向けた、バイオマス、水素、アンモニア、CCUS(二酸化炭素回収・有効利用・貯留)の共同での実証や、インフラ・サプライチェーンの共同整備、アジア版トランジション・ファイナンスのルール整備、ゼロエミッション技術に関する標準の策定、また、アジアワイドでの排出権取引の活用などを進めることで、アジアが共に、脱炭素化を目指していくための枠組みです。
我が国は、持てる技術や、これまでの経験、ノウハウ、さらにはファイナンス能力を総動員して、アジアの脱炭素化に貢献していきます。
既に、日系企業によるシンガポールでの水素供給に向けたサプライチェーン構築の実証や、インドネシアにおけるアンモニアの混焼・専焼の実現に向けた検討、日本の都市からアジアの都市への脱炭素化の知見やノウハウの移転などの取組が始まっています。今後、こうした取組をアジア全体に広げていきます。
共同体構想について、インドネシアから、是非、日本と力を合わせ、アジア・ゼロエミッション共同体を実現したい、そのために、インドネシアも日本と共に中心的な役割を果たしたいとお返事を頂きました。今日、この「アジアの未来」の場において表明いただいたように、タイからも前向きな反応を頂いています。アジア各国と力を合わせて、共同体を実現していきたいと思っています。
1か月ほど前、タイを訪問した際に、バンコクにあるKOSENにお伺いしました。KOSENとは何か、皆さん御存じでしょうか。
KOSENとは、日本が生み出した、実践的なエンジニアを育成するためのユニークな高等教育機関です。
タイには、日本の支援を受けて設立されたKOSENがあります。そのKOSENで、授業を見学させてもらった際、2人のタイ人学生が、日本語で、「オシロスコープが…、」あるいは「固有振動数が…、」と、専門用語を交えて、私に実験の内容を教えてくれたことが強く印象に残っています。
あの2人が、近い将来、日本の若者と、議論しながら、タイの、さらにはアジアの明日を築いていく。そんな未来を容易に想像することができました。
日本は、日本だけが得をするといった一方的な関係を望みません。
人づくりへの支援は、そんな日本の姿勢を象徴する取組です。KOSENもそうですが、我が国は、長年にわたり、支援先の国に、ヒューマンリソースが蓄積されるように、人づくりの協力を行ってきました。
良き隣人として、良きパートナーとして、皆さんと共に、アジアの未来を切り拓(ひら)いて行く。それが、我々の目指すところです。
我が国は、そのために全力を尽くし、積極的に役割と責任を果たしていきます。
最後になりますが、本日御参加の皆様の御健勝と、今後益々の御発展を祈念し、私の挨拶、そして講演とさせていただきます。